闘争か逃走か

アドレナリンという言葉、聞いたことありますよね?

興奮してアドレナリンがドバドバ出ている、なんて使い方をよく目にします。

もちろんドバドバと出ていることを見ることもできませんし、実際、汗のようにドバドバ出るものではありませんが、興奮している時に出ているというのは正解です。

アドレナリンは副腎髄質から分泌される神経伝達物質です。

副腎髄質は腎臓のやや上にある副腎内部に存在しています。副腎は英語でadrenal gland、その中(in)にある髄質から分泌されるので、adrenaline、アドレナリンと呼ばれます。

このアドレナリン、1900年という遠い昔、初めて日本人が牛の副腎から発見した経緯があります。 続きを読む 闘争か逃走か

嫌いな相手は見るより感じる方が先

ではアドレナリンが副腎髄質から分泌されるまでの系統をご紹介しましょう。

まずドキドキする状況に出会うことから始まります。

分かりやすい例として毛嫌いしている人を思い浮かべてください。

相手を見ると視覚情報として視神経を通り脳に送られますが、最初に通過するのが視床にある外側膝状体です。

ここを経由して脳後方にある視覚野に情報が届き、初めて嫌いな相手が来た、と見ている認識ができることになります。

視床下部は交感神経や副交感神経、体内分泌機能の調整から摂食、飲水行動、睡眠などの本能行動、さらに怒りや不安などの情動行動の指令を出す中枢です。 続きを読む 嫌いな相手は見るより感じる方が先

アドレナリンの元となるドーパミン

ノルアドレナリンが交感神経内で生成されるのに対して、アドレナリンが副腎髄質でしか分泌されないのは、ノルアドレナリンをアドレナリンに変える酵素が副腎髄質内にしかないからだと言われています。

さて、ノルアドレナリンがアドレナリンに変化することは分かりましたが、今度はノルアドレナリンがどうやって作られるのか、という疑問が残りますね。

そこで登場するのがドーパミンです。

警戒すべき相手が登場した時、視床下部から交感神経に神経伝達物質を発射、その神経伝達物質がノルアドレナリンに変化するのですが、この視床下部から出る伝達物質こそドーパミンなのです。 続きを読む アドレナリンの元となるドーパミン

好きな異性でもアドレナリンは分泌される

アドレナリンは原則的にfight or flightホルモンですが、これ、生命維持のために絶対的に必要な神経伝達物質であり、危険な時や嫌いな相手の時に限って出るものではないことを知っておいてください。

もっとも分かりやすいのは、好きな異性ができた場合ですね。

ただし、恋愛成就前の段階です。

経験ありますよね?

好きな人と会っただけで、動悸は激しくなり、指先は震え、話す言葉はしどろもどろ(言語中枢がアドレナリンでバランスが取れなくなっている状態)、できることなら逃げ出したい、なんて気分。 続きを読む 好きな異性でもアドレナリンは分泌される

緊張こそアドレナリン分泌の証拠

アドレナリンは恋愛に対して効果を発揮しませんが、スポーツの世界では当たり前のように利用されています。

もちろん分泌させたからといってドーピングに引っかかることもありません。

これも経験している人なら分かるでしょう。

試合で自分の順番が近づいてくるほど、心臓の動悸は激しくなり、練習したことも忘れ、応援してくれている人の顔も見えなければ声も届かず、本番に際してなお、手足が震えている、といった状況。

緊張、ですね。

スポーツのほとんどは闘争本能の代替行為です。 続きを読む 緊張こそアドレナリン分泌の証拠

アドレナリン全開の究極なスポーツ

スポーツの世界では、むしろアドレナリンを出すことこそ結果につながると考えられています。

相撲の立会前に顔をパンパンと叩く行為、ハンマー投げの瞬間に大声を出すこと、野球の円陣、これらはすべてアドレナリン分泌に影響しています。

アドレナリンを分泌させることによって集中力、攻撃性、運動能力が高まり、それまで練習で培ってきた総合力の発揮へつなげることはできるのです。

その際たるスポーツがボクシング。

ギリシャでオリンピックが誕生して以来、けっして途切れることなく続けられているスポーツにアドレナリンの分泌は欠かせません。 続きを読む アドレナリン全開の究極なスポーツ

自然界ではアドレナリン分泌が生命を守る

窮鼠猫を噛む。これもよく聞く言葉です。

猫に追い詰められたネズミは逆に猫を噛むことから、弱い立場でも追い込まれると強い立場に反撃して痛手を負わせることがあるという喩えですね。

やはり完全にアドレナリン全開状態にならないと起こりえない現象です。

闘争か逃走か。

二者択一のうち、その逃走ができなくなれば闘争しかありません。

捕食動物は捕食される側より絶対的な有利を持っているように感じられますが、実際、捕食する側が簡単に捕食される側を倒すというような状況はなく、捕食される側が捕食する側を攻撃して撃退することは自然界のなかでよくあることなのです。 続きを読む 自然界ではアドレナリン分泌が生命を守る

緊張を闘争に変えるのは練習量しかない

スポーツの試合の前に緊張することは悪いことではありません。それだけアドレナリンが分泌して試合に備えているという証なのですから。

経験値の高い選手(まれに経験値が少なくとも天賦の才を持つ選手もいますが)ほど、このアドレナリンの分泌を高揚として受け入れ、時には楽しむことさえしています。

闘争か逃走か、という二者択一のうち、逃走を自ら減少させ、闘争だけを研ぎ澄ませている選手ですね。

残念ながら、本能の一部である逃走を減少させる効果的で普遍的なマインドトレーニングは見つかっていません。

逃走を減少させることが上手な選手は各々、自分に合った方法、たとえば試合の前に興奮作用のある、あるいは逆にヒーリング効果のある音楽を1人で聞くとか、個室トイレに入って大声で叫ぶとか、試合がある日の朝は必ず靴下を右足から履くとか、時には他の人に理解できない方法を持っています。 続きを読む 緊張を闘争に変えるのは練習量しかない

緊張と向き合う方法

アドレナリン分泌はスポーツに限ったことではありませんね。

書道にも大会はあるし、音楽関連の発表会や仕事のプレゼンテーションなどでもアドレナリン分泌量に個体差があるにせよ分泌はします。

闘争、という言葉が的確ではないとしても、立ち向かう現実であることに変わりありませんし、その現実に対して失敗しないように、上手に、練習の成果を出すように、と思う人ほどアドレナリン分泌が盛んになります。

アドレナリン分泌による現象、つまり緊張の対処法はスポーツと変わりありません。

本人の緊張を理解せずに周囲の人はリラックスしろ、と言いますが、これは間違い。 続きを読む 緊張と向き合う方法

ドーパミンは行動すべてに関わる神経伝達物質

緊張、すなわちアドレナリン分泌状態に陥った時、アドレナリンの持つ特性である逃走的本能を減少させることで、その状況を効果的に運ぶことできます。

その減少方法は各々で見つけるしかありませんが、方法を見つける効果的なトレーニングはあります。

それはドーパミンの分泌を盛んにすること。

ドーパミンを盛んにするとアドレナリンも分泌されてしまうのでは?と疑問を持たれた人は、このコラムをきちんと読まれている人ですね。

確かにドーパミンは脳内の神経細胞(ニューロン)によって生成されるノルアドレナリン、アドレナリンの前駆体です。 続きを読む ドーパミンは行動すべてに関わる神経伝達物質

ドーパミンが与える快の感情

ドーパミンはけっして「快楽」だけを司る神経伝達物質ではないのですが、「快楽」を司っていると聞くと、興味がそちらに向くのは人間の性ですね。

興味津々の方はすでにドーパミンが分泌していると思ってください。

せっかくドーパミンが分泌されているのですから、それを活かすためにも先にドーパミンが報酬系神経伝達物質と呼ばれている理由を説明しましょう。

人を含む動物には生物学的欲求があります。

喉が乾く、お腹が減る、寒い、暑い、といった生命に関わる欲求のことで、この欲求を満たさないと生命維持が不可能となります。 続きを読む ドーパミンが与える快の感情

ドーパミン・コントロールは人間だからできる業

人と動物には生物学的欲求がありますが、人には動物以上に社会的な欲求があります。

肉親、他人に関わらず褒められると嬉しくなります。

好きな異性から愛されていると実感すれば幸福感が溢れます。

仕事が思った通りに運んで成功すれば充実感に漲ります。

これらは社会的な欲求に対する報酬で、ドーパミンが盛んに分泌されている状態になります。

そして、人に限っていえば社会的欲求の報酬があるほど行動の活発化が見られるのです。 続きを読む ドーパミン・コントロールは人間だからできる業

猫とツキと干支の性格

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