最後のサクソン人の王エドワード

時のノルマンディー公ギョームはエドワード王の遠い親戚に当たり、エドワード王より王位継承を約束された、という理由から実際に王位継承をしたエドワード王の義弟、ゴドウィンソンことハロルド2世に対して攻撃を始め、ヘイスティングズの戦いで勝利、ハロルド2世は戦死してしまいます。

こうして、ノルマンディー公ギョームはブリテン島でノルマン人最初の王となり、長くブリテン島を支配していたサクソン人の王は途絶えました。

これがノルマン・コンクエスト、いわゆるノルマン朝の始まりですね。

フランス読みのギョームを英語に直すとウィリアム。 続きを読む 最後のサクソン人の王エドワード

最初のノルマン人の王

ケルト系民族に取って、なにより憎いのはサクソン人。

そのサクソン人の王を記録から排除、サクソン人撃退に獅子奮迅の活躍をしたアーサーを王に仕立てて美談を作り、民衆の共感を得ると同時に、そのサクソン人王政を撃破したのが現王政である、ということを暗にアピールしたのが、「ブリタニア列王史」である、というのが現在、この歴史書に対する見解です。

歴史書を書いたジェフリー・オブ・モンマスは当時のオックスフォード助祭長のウォルターから「ブリトン人の言葉で書かれたかなり古代の本」をラテン語に翻訳した、と主張していました。 続きを読む 最初のノルマン人の王

歴史書というより創作本として価値あり

現代において歴史書とは認められていない「ブリタニア列王史」を書いたジェフリー・オブ・モンマスの名誉のために付け加えるとするならば、当時において歴史書の資料を手に入れることはとても困難であり、口語伝承が記述に重要だったことを考えれば正確な史記の作成というのは無理な話といえるでしょう。

時代背景を考えれば王政だけでなくキリスト教会の意向も加味されるので脚色は当然の結果とも言えます。 続きを読む 歴史書というより創作本として価値あり

史実が少ないほど創作性は高まる

実在した人物を物語にする場合、史実が多いほど拡大解釈は難しくなります。

逆に、史実に残る記録がわずかであるほど、物語としては創造性を高めることができるわけですね。

その意味で、アーサーは「ブリトン人の歴史」を始め、わずかな記述しか残っていないために伝説を想像によって膨らませることができた人物といえます。

話はそれますが、わずかな史実から創造性を膨らませた日本の物語で秀逸なのが、故・隆慶一郎氏が描いた前田利益の生涯「一夢庵風流記」でしょう。 続きを読む 史実が少ないほど創作性は高まる

まとめ的存在の「アーサー王の死」

その後のヨーロッパ騎士道物語に大きな影響を与えた「ブリタニア列王史」ですが、これを読んだ限りではアーサー王のエピソードで有名なシーンが出てきません。

固い石に突き刺さっていた剣を抜くシーンもなければ円卓を囲んだ騎士たちの話もなく、聖杯を探しに行く物語もないのです。

じつはこれらの話、「ブリタニア列王史」をベースにして作られたエピソードで、同時多発、あるいは継続、それからスピンオフとして描かれたいくつもの散在している物語なのです。 続きを読む まとめ的存在の「アーサー王の死」

剣を抜く時はアーサー若干15歳

アーサー王物語、最初にご紹介するのはご存じ、剣を抜くシーンから。

アーサーはペンドラゴン王が横恋慕して略奪愛となったイグレーヌとの息子。

この辺りは「ブリタニア列王史」と変わりありませんね。

違ってくるのは、ペンドラゴン王が魔法使いマーリンの手によってイグレーヌの夫であるゴルロイス公に化けて密通するところから。

マーリンはペンドラゴン王がゴルロイス公に化けたいという願いを聞く代わりにある要求を突きつけます。 続きを読む 剣を抜く時はアーサー若干15歳

新しい王となったアーサー

義兄ケイに同行してロンディニウム(現在のロンドンですね)までやってきたアーサーですが、槍試合大会で剣の試合に出場するケイはなんと大切な剣を宿に忘れてきてしまいます。

ケイに頼まれて宿まで剣を取りにきたアーサーですが、すでに宿の主人は槍試合見物(当時の槍試合は地域におけるビッグイベントでした)に出かけてしまい、宿には入れず仕舞。

そこでアーサー、大聖堂前に剣があったことを思い出し、大聖堂前に駆けつけるとあっさりと剣を引き抜いてしまい、ケイに代替品として渡します。 続きを読む 新しい王となったアーサー

エクスカリバー登場

アーサー王が引きぬいた剣はさまざまな名称で呼ばれています。

「ブリタニア列王史」ではカリブルヌス、940人のサクソン人を倒したという「ブリトン人の歴史」ではカリバーン、そしてマロリー著「アーサー王の死」ではエクスカリバーとなりました。

まあ、アーサー王物語はケルト語に始まり、ラテン語や英語、フランス語それぞれで物語が作られているので呼び名が変わるのは当たり前の話、ギョームがウィリアムになるようなものですから、日本人としてはあまり名称に突っ込む必要はないでしょう。 続きを読む エクスカリバー登場

「湖のランスロ」登場

湖の乙女はアーサー王とエクスカリバーのシーン以外にも少しですが重要な役割を担って登場してきます。

それはのちに円卓の騎士となるランスロットを18歳まで育てるという役。

アーサー王伝説におけるトリックスターといえるのがランスロットでしょう。

ベンウィックというフランスの領主だった父、バン王は即位したばかりのアーサー王を援助するためにブリテン島に遠征しますが、その隙に領土を奪われ戦死、妃のエレインは赤子だったランスロットを抱えて逃亡し、湖の畔で休んでいるところを湖の乙女がランスロットをさらってしまいます。 続きを読む 「湖のランスロ」登場

ランスロットと恋に落ちるグイネヴィア

ここからはなぜかアーサー王物語、なぜかラブコメ調でありソープオペラ調であり、日本の昼メロ(懐かしい表現ですね。要するに愛憎劇とでもいいましょうか)風にしばらくなっちゃいます。

なぜそんな風になっちゃったのかというと、単純に言えば宮廷の退屈しのぎですね。

平和な時代、戦争ものよりも恋愛ものの方が受けるのは時代を超えて変わらぬ世相ともいえます。

アーサー王物語の派生として「トリスタンとイゾルデ」や「ランスロまたは荷車の騎士」などが、このラブコメ調やソープオペラ調の代表格となり、その後の「アーサー王の死」に取り入れられたわけです。 続きを読む ランスロットと恋に落ちるグイネヴィア

ガラハッドを身ごもるエレイン登場

ランスロット、とにかくモテます。羨ましいくらいです。

ペレス王の娘、エレインは「この国でもっとも美しい」と評判の乙女ですが、その美しさに嫉妬した魔女、モーガン・ル・フェイによって魔法で閉じ込められ、熱湯の釜で茹でられるという呪いをかけられてしまいます。

これを救出したのがランスロット(ついでにドラゴン退治なんかもしちゃったりして)。

当然、助けだされたエレインはランスロットに恋をしてしまいます。 続きを読む ガラハッドを身ごもるエレイン登場

ランスロット、美女2人に板挟み

「二度と私の前に顔を出さないでくださいね!」

円卓の騎士、ランスロットと不倫の恋仲になっているアーサー王の妃、グィネヴィアは頭を下げるランスロットに厳しい言葉を突きつけます。

そりゃ不倫の恋仲とはいえ、グィネヴィアが怒るのは当たり前。

なにせランスロット、ペレス王の娘、エレインと寝てしまい、子供まで作っちゃったんですから。

ランスロット、これはエレインの策略、自分は騙されたと何度も説得、ようやくグィネヴィアの怒りを解きますが、エレインはなんとかして自分の夫にすべく、またもやランスロットを策略に嵌めます。 続きを読む ランスロット、美女2人に板挟み

猫とツキと干支の性格

Copyrighted Image