不安や恐れを好むな

奇妙なことだが、ある人々は不安や怖れが好きなのである。ある女性は私にこう訴えた。

「私にはテレパシーの能力があって、それが恐ろしくてたまらないのです。なぜなら、私の悪い考えが、テレパシーで私の好きな人に伝ってしまって、その人が私を嫌いになってしまうのではないか、と思うのです」

私は彼女にいった。「では、その人のために、良いことだけ思ってあげれば良いのではありませんか?」

「はい、でも、私も人間だから、時には、ちらっとでも悪いことを考えてしまいますから。それに、私のテレパシーは、良いことは伝わらず、悪いことだけが伝わってしまうのです」

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「ところで、あなたのテレパシーが他人に伝わったという物理的証明はてきます?」と私はたずねた。

「それは出来ないのです。でも私には解るんです」と彼女は答えた。

「だったら、平気ですよ。あなたにとって実証不可能なことは、他人にとっても実証不可能なんです。悪いことを考えたな、といって他人があなたを責めても、あなたは、そんなことを私は考えませんでした、といってとぼけてしまえばよろしい。なにしろ、物理的に証明出来ないことなんですから、とぼけることは出来ますよ」こう私は答えた。

彼女の表情はなお不満気であった。というのは、彼女は一言でいえは、恐れていたいのだ。このように荒唐無稽なテーマでなくても、ある人々は、怖れを好み、その快感の中に漫っているものである。それは、怪談やお化けを好む心理とも似ている。

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