ツキをもたらす説得法は「利」を示すことだ

坂本竜馬は、憂国の志士たちか大論争をしている時に、その議論に加わらす、かたわらにつまらなそうな顔をしていたという。そこで一人が「なぜ、貴公は論に加わらんのか?」と訊くと、竜馬は「論では人は動かぬ」と答えた。

「では、何をもって、人は動く?」と更に訊くと、「利で動く」と、ぽつりと答えたという。これは正に至言である。しばしば、人は他人を説得しようとして、非常に能弁になるものだが、それはかえって逆効果になり易い。

説得とは要するに、自分の欲するように他人を動かそうとする言動である。では、その説得に応ずる場合にはどんなものかというと、次の四つの場合が考えられる。

その一は前述したような「利」であり、この利益性に魅かれた時、人は楽々と動く。次は、「善意の愛情」である。友情にしろ、異性愛にしろ、また人類愛にしろ、人間の持つこの善性は、時にはゆすぶられ、無償の行為をもって応えることがある。第三は「憐憫」である。哀れだと思って、不快感をこらえながら、なにがしかの援助を与えることもある。第四は「脅し」である。他人の弱味を握り、それをタネに、陰に陽に脅して、自分の意に従わせるのだ。

この四つの内、ツキを呼び込むやり方は、第一の「利」を示す方法である。そして、その利益性を示すには多弁である必要はない。ただ、明確に解りやすく、その説明が出来れば良いのである。相手がそれに理解を示した後、それに欲求の念を動かすかどうかは、あくまでも相手側の選択にかかっているのだ、と知らなければならない。

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