「神話シリーズ」カテゴリーアーカイブ

ギリシャ神話!相変わらずゼウスが支配する鉄の時代

青銅の時代が滅びると、残ったデウカリオンとピュラは石から人間を作り出し、英雄の時代を築きます(この英雄の時代は2人が生き残ったので青銅の時代の後半であるという主張もあります)。

テバイ戦争やトロイア戦争など、英雄の時代になると神々の話というより人間が多く出てくる物語になり、さらに英雄の時代から鉄の時代になると、いよいよ現代になります。

現代といってもギリシャ神話が統括された紀元前700年頃の話ですね。

鉄の時代の人間は神々への畏怖を失い、嫉妬深く強欲で、道具を使って他の国や人から物を奪うようになりました。

母なる大地の腹を切り裂いて金や銀や鉄を掘り出し、それを元に戦争をするようになりました。 続きを読む ギリシャ神話!相変わらずゼウスが支配する鉄の時代

ギリシャ神話!天球を抱え続けるアトラスの物語

ギリシャ神話は全能の神ゼウスが異形の王デュポンを倒したところまでを大きな粗筋としています。

もちろん、その後の神話の数々も興味深く、また複雑に入り組んだ相関図と時系列を持っていますが、この辺で少々、神話の横糸を紹介しましょう。

これまでの粗筋のなかでも気になって仕方がないところがあります。

たとえば、今でもアトラスは球体の天空を支え続けているのでしょうか?

筋肉質の巨躯を老人のように曲げて、重い天球を抱えて辛そうな顔をしているアトラスがかわいそうと思う人もいるでしょう。

では、アトラスの顛末記の始まり。

世界の西の果てで天球を支え続けるアトラスの唯一の慰めは、黄金の林檎が実る木々を守るヘスペリデスの園の実娘たち。 続きを読む ギリシャ神話!天球を抱え続けるアトラスの物語

ギリシャ神話!「残念な」神様アトラス

幾星霜も重い天球を抱え上げ、慰めはヘスペリデスの園を守る実娘の笑顔だけ。

そんな苦行を強いられるアトラスに取って、半神半人の英雄ヘラクレスの願い事はたとえわずかの間でも天球の重さから逃れられるとあって、アトラスは喜んで申し出を受け入れます。

ヘラクレスは重さを和らげるために肩へ当て物をし、アトラスから天球を受け取ると、その強靭な身体で天球を支えました。

ゼウスから苦行を申し付けられてから初めて天球の重さから逃れられたアトラスはヘスペリデスの園に出かけ、娘たちから黄金の林檎をもらってヘラクレスの元に戻ります。

ヘラクレスはアトラスに感謝の意を表して天球を返そうとしますが、アトラスはヘラクレスから少し間を置いて立ったまま言います。 続きを読む ギリシャ神話!「残念な」神様アトラス

ギリシャ神話!ヘラクレスの選択

「ヘラクレスの選択」とは、安全な道と苦難の道のふたつの道があった時に苦難の道を選ぶこと、と簡単に解釈されていますが、実際はもう少し複雑で、安全な道の果てには刹那的快楽しかなく、苦難の道の果てには美徳があります。

このどちらを選ぶのか、というのが「ヘラクレスの選択」です。

ギガントマキアで功績を上げたヘラクレスは本来、アルゴス(都市の名前)の王になるはずでしたが、ゼウスの正妻ヘラによって狂気を吹きこまれ、ヘラクレスは自分の子どもを火の中に放り込んで殺してしまいます。

ちょっと端折りましたが、やがて正気に戻ったヘラクレスは自分の行いを悔いて神託を授けるゼウスの息子、予言の神であるアポロンの元に行きます。

アポロンからの神託はミュケーナイ王エウリュステウスに仕え、10の勤めを果たせ、というもの。 続きを読む ギリシャ神話!ヘラクレスの選択

ギリシャ神話!ヘラクレス最後の難業

ヘラクレスに与えられた10の勤め(実際には12の難業となりましたが)の最後は、冥界の番犬ケルベロスを連れてくることです。

ケルベロスは大地の神ガイアが奈落の神タルタロスと交わって産んだ異形の王、ゼウスと死闘を繰り広げたデュポンと、上半身は美女で下半身が蛇という、これもまた異形のエキドナとの間にできた子どもです。

デュポン、ゼウスと死闘をしていた割にすることはしているんですね。

デュポンの子どもだけにその姿は恐ろしく、3つの獰猛な犬の頭と龍の尾を持っており、冥界から脱走を試みる亡者を捕らえて食い殺す役目を担っています。

…のはずですが、勇者ヘラクラスに取っては他愛もない相手で、簡単に捕まえて地上に連れていくと、地上の光に驚いたケルベロスは吠え始め、その唾液が猛毒のトリカブトになりました。 続きを読む ギリシャ神話!ヘラクレス最後の難業

ギリシャ神話を系統化した「神統記」

ギリシャ神話が西洋において広く伝承されたのは紀元前800年末頃の吟遊詩人、ホメロスによる長編叙事詩「イーリアス」と「オデュッセイア」の影響が強いと言われています。

この2つの長編叙事詩は英雄と神々の物語ですが、これに先立って神々の系譜をまとめた記述があります。

それはヘシオドスが書いた「神統記」で、「イーリアス」や「オデュッセイア」の物語として散在していたギリシャ神話がヘシオドスの手によって初めて系統化されました。

とはいってもギリシャ神話は膨大で、ヘシオドスの書いた系統的叙事詩でも時系列や相関図には矛盾が生じています。

ギリシャ神話に興味を抱いた人は、とりあえず「神統記」、「イーリアス」と「オデュッセイア」を読んでみて、自分なりの解釈をすると、より面白くなることは間違いありません。 続きを読む ギリシャ神話を系統化した「神統記」

北欧神話!日本のホテル朝食といえばバイキング

ワールドワイドに展開するホテルや日本のシティホテルの朝食といえば、バイキング形式が定番となっています。

前菜から主菜、パンもバターもジャムもあって、ソフトドリンクが並び、フルーツやデザートまで用意(日本ではこれにご飯や味噌汁、海苔や納豆まで加わります)、すべて食べ放題、というわけですね。

この食べ放題形式、ホテル側の都合で大量の人数を一度にこなすには最適の料理方法のため、最近ではバイキング料理とまで名前がつけられ、ファミリーレストランや焼肉店などにも見られるようになりました。

横浜の中華街に至っては、大規模店舗になるほど食べ放題形式となり人気を集めています。

横浜在住で中華街へ頻繁に足を運んでいた人は、さぞ嘆いていることでしょう。 続きを読む 北欧神話!日本のホテル朝食といえばバイキング

北欧神話!食べ放題がバイキングになった理由

ホテルの朝食から始まったバイキング料理という食べ放題の形式、それほど古くなく、1957年、当時の帝国ホテル支配人がデンマークに行った時にさかのぼります。

この時、スカンジナビア料理であるスモーガスボードに出会ったことにより、当時、パリで修行中だったその後の帝国ホテルの総料理長、村上信夫氏に提案したことから食べ放題形式の料理が生まれたといいます。

スモーガスボードの名前をそのまま使わなかったのは、その名称が日本人に取って馴染みがないこと、インパクトがないことが理由です。

当時、帝国ホテルの隣、日比谷や映画劇場で上映していた「バイキング」のワンシーンで、さまざまな料理を豪快に海賊たちが食べていることから、スモーガスボードのスタイルにバイキングとネーミングしました。 続きを読む 北欧神話!食べ放題がバイキングになった理由

北欧神話!バイキングを生み出したゲルマン民族

北欧神話の話をするというのに、ちっとも神話が出てこないで、メシの話ばっかりしていると怒らず、もう少し前振りにおつきあいを。

ヨーロッパの人種を一括りにすることはアジア人種から見ると大変に難しいのですが(もちろんアジア人種もじつは細かく分かれているのはご承知の通り)、ここでは便宜上、大雑把に分けてしまいましょう。

ひとつはラテン系、ひとつはスラブ系、ひとつはゲルマン系で、帝国ホテルの支配人が出会ったスモーガスボードはデンマーク、つまりゲルマン系の伝統的な料理なのです。

このゲルマン系、現在のドイツ北部やデンマーク、スカンジナビア北部に居住していたインド・ヨーロッパ語族でのちにバイキングと呼ばれる海洋民族を生み出した種族も含まれているのです。

つまり、北欧神話の根源を持つ民族ですね。 続きを読む 北欧神話!バイキングを生み出したゲルマン民族

ワーグナーと北欧神話の関係

北欧神話はゲルマン民族の神話、と前節で書きましたが、正確に言うとゲルマン民族のなかでもノース人に伝わる民族伝承です。

ノース人、文字通り北方からやってきた人々を意味する言葉で、古代スカンジナビアに先住していた民族を表しており、厳密にはスウェーデン人と分けるそうですが、これは日本でも古代縄文人と弥生人を分類するくらい、あるいはそれ以上難しい話になるので割愛しましょう。

ここでは便宜上、ゲルマン民族の根底にある北欧神話、と定義します。

というのも、ゲルマン民族であるドイツにも北欧神話が色濃く残っているからです。

たとえばヴィルヘルム・リヒャルト・ワーグナー。

楽劇王と別名を持つほどロマン派歌劇の頂点を極めた作曲家で、19世紀後半のローロッパ文化に多大な影響を及ぼしたドイツ人です。 続きを読む ワーグナーと北欧神話の関係

北欧神話を土台にした物語

19世紀の偉大な作曲家、リヒャルト・ワーグナーが生み出した「ニーベルングの指輪」は北欧神話をモチーフにしています。

ここでは「ニーベルングの指環」について、詳しい解説は行いません。

なにせ上演時間は約15時間という長編のため、当時、ワーグナーのパトロンだったルートヴィヒ2世は出来上がった作品から上演しろと催促したくらいですから。

黒澤明監督が「七人の侍」を製作していた時、配給元である東宝の幹部がなかなか出来ない作品に対して催促、黒澤明監督は撮れているフィルムの中から予告編を製作したところ、幹部は黙って黒澤明監督の言うままになってしまった、という逸話を思い出します。

同じく黒澤明監督が「白痴」を撮り終えた後、東宝幹部があまりにも上演時間が長すぎることから編集で短くしろと催促、カット部分が多すぎることに「これ以上カットするならフィルムを縦に切れ!」と黒澤明監督が言ったことも思い出されます。 続きを読む 北欧神話を土台にした物語

映画に出てくる北欧神話のイメージ

ドイツのワーグナーによる「ニーベルングの指環」も、イギリスのJ・R・R・トールキンによる「指輪物語」も、どちらも北欧神話をモチーフにしており、両者とも民族的には(根源をたどればという注釈つきで)ゲルマン系になります。

ただし、「指輪物語」が「ニーベルングの指環」からインスパイアされたというのは正しくありません。

トールキンは作家であると同時に文献学者、語学研究家であり、古代アングロサクソン語の研究も行っていたので、当然、北欧神話に対する造詣も深かったことから、物語の類似性は必然と考える方が妥当でしょう。

「指輪物語」も「ニーベルングの指環」同様に長編であり、映画となった「ロード・オブ・ザ・リング」三部作は一部にしか過ぎず、案の定、「ホビット 思いがけない冒険」が製作されました。 続きを読む 映画に出てくる北欧神話のイメージ