「北欧神話」カテゴリーアーカイブ

北欧神話!巫女の予言

北欧神話はなぜ天地創造と同時に世界終末まで世界観として描かれていたのか、というと、この北欧神話の構成の元になった「散文のエッダ」では重要な一節として、その後に書かれた「古エッダ」では冒頭にある「巫女の予言(ヴォルヴァの予言)が、いきなり天地創造と最終的な世界滅亡を語ることがその理由です。

映画の世界でもよくありますよね。

結末を見届けた脇役が語り部となって全編を話し始める、という方式。

最近の映画ではクリストファー・ノーランが監督した「インセプション」で、サイトー(渡辺謙)の元にやってくるコブ(レオナルド・ディカプリオ)がファーストシーンに登場するという、あの手法です(あんまり紹介するとネタバレになってしまうので)。

一種の倒置法ともいえます。 続きを読む 北欧神話!巫女の予言

北欧神話の体系は詩の教則本から

北欧神話が現在に伝えられる源流となったのは1220年頃、アイスランドの詩人スノッリ・ストゥルルソンが記した詩の教本「エッダ」で、このなかの「ギュルヴィたぶらかし」が主に現在の北欧神話を形成しています。

ギリシャ神話同様、北欧神話も北ゲルマン系民族による詩の形で口語伝承されたもので、この神話の詩を散文にして解説、若い詩人たちへの指南書としたのですが、それまで口語伝承の詩が文面として残っていなかったことから北欧神話を初めて体系的にまとめたとして高く評価されています。

スノッリの書いた「エッダ」の元になっているのは古ノルド語(13~14世紀の北ゲルマン民族で使われた言語)で作られた北欧神話や英雄伝説の詩ですが、スノッリが「エッダ」を書いた50年後、それらの詩の原型を記した「王の写本」が発見されたことから、この「王の写本」を「古エッダ」や「韻文のエッダ」、スノッリが書いたエッダを「散文のエッダ」とか「スノッリのエッダ」として区別しています。 続きを読む 北欧神話の体系は詩の教則本から

北欧神話!オーディンが訪れたミーミルの泉

世界樹ユグドラシルに包まれた最上層、アースガルドに住むオーディンは最高神となりましたが、ギリシャ神話の最高神であるゼウスと違うのは全知全能ではないこと。

なにしろオーディン、世界を創り上げたはずなのに自分の知識欲をさらに満足させようとユグドラシルの根にある魔法の泉のひとつ、別名、知恵の泉といわれるミーミルの泉に出かけます。

このミーミルの泉、どこにあるのかというと第2層の巨人族が住むヨトゥンヘイム。

いわば敵対関係にあるところですが、この時点では巨人族、まだ神々に対抗する力を持っていなかったのでしょう。

しかしミーミルの泉は巨人ミーミルが守っており、ミーミルは知恵の泉の番人をしているくらいなのでとても賢いのです。 続きを読む 北欧神話!オーディンが訪れたミーミルの泉

北欧神話のミッシングリング

北欧神話、一応は「エッダ」によって体系づけられていますが、なにせ13世紀に入ってのこと。

しかも「エッダ」は当初、詩を散文にした教則本であったことから北欧神話の体系というよりも詩に重点が置かれていたので、きちんとした体系はさほど考慮されていません。

しかも口語伝承する北ゲルマン系の語り部は姿を消し、韻文のエッダ詩しか残されていないのですから、矛盾は至るところにあります。

つまりミッシングリングが体系の中にいくつも存在しているわけですね。

古代の北ゲルマン民族は古代ギリシャ人のように洗練されていたわけではないので、その点でも最初からギリシャ神話の体系を目的にしたヘシオドスの「テオゴニア(神統記)」と詩の教則本だった「エッダ」とは体系としては比べる方が間違いというものでしょう。 続きを読む 北欧神話のミッシングリング

北欧神話!終わらせる者、その名はロキ

北欧神話は横糸が複雑に絡み合って本筋を形成するややこしい部分があるので、アプローチを変え、ロキを中心として時系列を組むと分かりやすいでしょう。

巨人族でありながら、最高神オーディンが巨人族の住むヨトゥンヘイムまで下りていき、ミーミルの泉の水を飲んだ後、なぜかオーディンに同行するロキ。

古ノルド語でロキは「閉ざす者」や「終わらせる者」という意味があります。

不吉な名前ですね。

ロキは父親こそ名も無き巨人でしたが、母親はラフフェイと言い、一節にはアース神族の一員だったという仮説もあります。 続きを読む 北欧神話!終わらせる者、その名はロキ

北欧神話!神々のために働くロキ

巨人族でありながら神々の住むアースガルドへ行ったオーディンの義兄弟、ロキですが、神々にとってロキは格下の巨人族ですから同等に見るはずがありません。

アースガルドに住む神々、ロキにいろいろと仕事を依頼します。

この辺、横糸なのでサラッと流しますね。

たとえばオーディンが持つ槍、グングニルはロキが小人の世界の住人であるドヴェルグ(ドワーフのことですね)の鍛冶屋、イーヴァルディの息子たちに作らせたもので、この槍はけっして的を外すことがなく、しかも敵を貫いた後は自動的に持ち主の元に戻り、さらにこの槍を向けた軍勢は必ず勝利するといわれています。

また農耕の神トールの鎚(打撃用武器)、ミョルニルもロキがドヴェルグに作らせたものです。 続きを読む 北欧神話!神々のために働くロキ

北欧神話!白雪姫と北欧神話

さて、北欧神話の佳境に入る前に、白雪姫の話でもしましょう。

なんの脈絡もないじゃないか、って?

いえいえ、これが実は北欧神話と大きく関係しているんです。

トリビアの泉的に読んでもらえれば幸いです。

白雪姫はアメリカのディズニー版で有名になりましたが、元はグリム童話のひとつの物語に過ぎません。

このグリム童話、ご存知の方も多いと思いますが、グリム兄弟による、つまりドイツ人、さらに言えばゲルマン民族による創作なのです。

これが北欧神話との最初のつながり。 続きを読む 北欧神話!白雪姫と北欧神話

北欧神話!7人の小人の正体

白雪姫と北欧神話のつながり、続きです。

といっても勘のいい方ならもうお分かりのことでしょうけれど。

さて、白雪姫は実母(継母)が差し向けた殺し屋によって森の中に追い込まれますが、殺し屋は白雪姫を不憫に思い、見逃します。

実母(継母)は白雪姫を殺した証として心臓(肝臓)を取ってこい、なんて残酷なことを言いますが、殺し屋はイノシシの心臓(肝臓)でごまかしちゃう。

森の中で気を失っていた白雪姫を助けるのが7人の小人ですね。

ここで7人の小人の姿を思い出しましょう。

人間よりも背丈が短く、手は地面に着くほど長く、皮膚は老人のようにシワがあり、長いひげをたくわえています。 続きを読む 北欧神話!7人の小人の正体

北欧神話!ロキの子供たち

北欧神話と白雪姫のつながりを閑話休題としてまとめたところで、いよいよ北欧神話、佳境に入ります。

最高神オーディンが知識を求めて巨人族が住むミーミルの泉まで出かけた時、その帰りにはなぜか義兄弟の契まで結んで、オーディンと一緒に神々の住むアースガルドまで行った巨人族のロキ。

最初は神々の下僕のごとく、さまざまな押し付けられた仕事をさばく手腕と頭脳が認められて神々と親交を深めていきます。

北欧神話最強の神と言われるトールと連れ立って巨人族のヨトゥンヘイムへ冒険に行ったりもし、さらにトールが窮地に立った時、輝点を聞かせて助けたりもしています。

そのロキがなぜ、神々と巨人族の最終戦争の引き金になるほどの存在となったのでしょう? 続きを読む 北欧神話!ロキの子供たち

北欧神話!ロキと神々の最初の厄になった3人の子供

では、ロキと神々の最初の厄であった巨人族アングルボザとの間に生まれた3人の子供について説明しましょう。

その前に、あっちこっちに子供を産ませて節操のない奴だ、などという今風の道徳観念は持たないように。

神話の世界というのはそういうもので、ギリシャ神話のゼウスにしても日本神話の大国主大神にしても、ロキとは比べ物にならないくらいの無節操ぶりを見せていますから。

ロキの3人の子供、正確には3人と呼べません。

なにしろ、1番目は狼であるフェンリル、2番目は毒蛇のヨルムンガルド、3番目は上半身こそ可愛い女性であったけれど下半身は腐敗していたというヘル。 続きを読む 北欧神話!ロキと神々の最初の厄になった3人の子供

北欧神話!パルドルに向けられた恨み

3人の子供たちに対する最高神オーディンや他の神々たちの仕打ちによって、ロキは神々と対抗する悪神へと変わっていきます。

ロキの恨みの標的は最高神オーディンとその妻、女神フリッグの間に生まれた光の神、パルドルに向けられます。

自分の味わった苦しみと同じ苦しみを最高神オーディンに与えると画策したわけですね。

その企みを予感したのか、パルドルは自分が誰かに殺されるという悪夢を見ます。

その話をパルドルから聞いた最高神オーディンや女神フリッグは慌てて対策を取ります。

なにしろパルドル、オーディンとフリッグにとって目に入れても痛くないほどの可愛い長兄、しかもアースガルドの人気者とあっては死なせるわけにいきません。 続きを読む 北欧神話!パルドルに向けられた恨み

北欧神話!ヤドリギの矢

前回、母親フリッグによって不死身となったパルドルにも弱点、つまりヤドリギだけはパルドルを傷つけることができるところまで紹介しました。

では、その続きです。

母親フリッグからパルドルの弱点を聞き出したロキはさっそくヤドリギを手に入れ、矢を作ります。

そしてパルドルを中心とした宴に紛れ込み、パルドルの弟、ヘズと出会います。

ヘズは神々がパルドルの不死身を確かめている最中にも傍らでひっそりと佇んでいました。

というのも、ヘズは盲目のため、兄のパルドルの位置が分からず、弓を射ることも刀で斬りかかることもできなかったからです。 続きを読む 北欧神話!ヤドリギの矢