個人発明家の「三重苦」は越えるべき対象でもある!アイデアを形にする

知り合いのN氏(自営業者)は、何か新しいものを発明するのが趣味である。いろいろなアイデアを思いつき、その効果を試してみたりもする。よく雑誌に紹介されているような、成功した発明家になれることも目指しているのだ。

ところが、そんなN氏には、決定的な障害があった。本人が言うには、まず、思いついた発明をうまく試作することが苦手、特許書類も自分で作成したいというのだが、文章の作成も苦手、そして、売り込みに関しても大の苦手というように、「三重苦」の状態であった。

実は、この3つは誰にとっても最初は難しいものであり、N氏に限ったことではない。N氏の障害は、この「三重苦」そのものというよりも、自分の可能性に制限を与えている「考え方」にこそ、あったのだ。そこで、N氏の発明がスムーズに行くお手伝いをすることになった。まず、特許出願したいというアイデアが、実際に考えているだけの効果があるのか、まずは試作品を作ることを勧めた。出願はそれからでも遅くはないし、そのほうが書類が作成しやすいのだ。

発明の内容は、浮袋とかモップなどの改良が中心であったので、いわば「小発明」であった。そこで発明試作のコツを教えたりもした。四苦八苦しながらも、なんとか試作品を自分で作り上げていた。小規模ながら類似品調査(デパートの同一商品調査、また特許庁の文献調査)も、説明した通り、行っていたようだ。

出願書類に関しては、作成のコツやアドバイスを与え、その後、とうとう完成したと言ってきた。そのとき、N氏は私から受けたアドバイスによって、「いままでずっと目の前に立ちはだかっていた大きな壁(発明を世に出すうえでの大きな障害)が、簡単に崩れさった」と語ってくれた。

そして、出願と同時に、発明と関連分野の会社に売り込みも始めたのだが、反応はいまいちだったようだ。それでも、自分の力で、発明を試作したり、売り込みができるようになったことをとても喜んでいた。その後の彼は、何かアイデアが浮かんでも、前のようにアイデアが浮かぶごとに連絡をしてくることは無くなった。発明の試作、手続き、売り込みの大体の、基本的な流れが分かったのだろう。

Yさん(婦人)の場合も、以前から小物発明的な趣味を持ちたいと思っていたのだが、やはり試作と特許の作成、売り込みに関して、いつも躊躇していたため、なかなか、それ以上前に出ることがなかったという。ところが、発明の試作や権利化について、ちょっとアドバイスしただけで、もう水を得た魚のようになり、それまでは頭の中にしかなかったアイデアを次から次へと、形にするようになった。

Yさんのアイデアを、発明サンプルとして作るのを私も手伝っていた。最初にも述べたように、発明サンプル(つまり試作品)がないと、なかなか企業には売り込みが掛けにくいのだ。一つ作ってしまえば、あとは写真に撮って、いろいろな売り込み方ができる。私の手には追えない複雑な試作には、発明サンプル・クリエイターという専門家にも頼んだりした。

特許書類に関しては、最初、とても難しい書類というイメージがあったようだが、私がお手本に書いた書類を読ませると、「これまで難しくて手が出ないと思っていた特許書類だったけど、これを読んでいても、なんだか楽しいイメージが浮かんでくるから不思議な気分になる」ということで、その後は、書類作りにも徐々に親しめるようになっていった。

Yさんには小さな娘さんがいたが、この子をイメージしながら、「改良したおしゃぶり」「履きやすく、脱ぎやすい子供用の靴」「オリジナル人形」などを作っては、実に生き生きとしながら、企業などへ提案して回った。そのせいもあってか、ある靴メーカーの専務から、「提案された子供用の靴が採用できるか検討している」という返事をもらったという。今後が楽しみである。

Oさん(主婦)は、振り子の形をしたイヤリングを作って、それを自主製作販売しようと考えている。私もそれを手伝って、ある雑誌の紙面などでPRをしてみた。さらに、縁起物を専門に扱っているお店で、試験的に置かせてもらえないか交渉してみたら、すんなりオーケーされた。後はOさんのほうで商品として見栄えのよい「振り子型のイヤリング」ができるのを待つばかりである。

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