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北欧神話!終わらせる者、その名はロキ

北欧神話は横糸が複雑に絡み合って本筋を形成するややこしい部分があるので、アプローチを変え、ロキを中心として時系列を組むと分かりやすいでしょう。

巨人族でありながら、最高神オーディンが巨人族の住むヨトゥンヘイムまで下りていき、ミーミルの泉の水を飲んだ後、なぜかオーディンに同行するロキ。

古ノルド語でロキは「閉ざす者」や「終わらせる者」という意味があります。

不吉な名前ですね。

ロキは父親こそ名も無き巨人でしたが、母親はラフフェイと言い、一節にはアース神族の一員だったという仮説もあります。 続きを読む 北欧神話!終わらせる者、その名はロキ

北欧神話のミッシングリング

北欧神話、一応は「エッダ」によって体系づけられていますが、なにせ13世紀に入ってのこと。

しかも「エッダ」は当初、詩を散文にした教則本であったことから北欧神話の体系というよりも詩に重点が置かれていたので、きちんとした体系はさほど考慮されていません。

しかも口語伝承する北ゲルマン系の語り部は姿を消し、韻文のエッダ詩しか残されていないのですから、矛盾は至るところにあります。

つまりミッシングリングが体系の中にいくつも存在しているわけですね。

古代の北ゲルマン民族は古代ギリシャ人のように洗練されていたわけではないので、その点でも最初からギリシャ神話の体系を目的にしたヘシオドスの「テオゴニア(神統記)」と詩の教則本だった「エッダ」とは体系としては比べる方が間違いというものでしょう。 続きを読む 北欧神話のミッシングリング

北欧神話!オーディンが訪れたミーミルの泉

世界樹ユグドラシルに包まれた最上層、アースガルドに住むオーディンは最高神となりましたが、ギリシャ神話の最高神であるゼウスと違うのは全知全能ではないこと。

なにしろオーディン、世界を創り上げたはずなのに自分の知識欲をさらに満足させようとユグドラシルの根にある魔法の泉のひとつ、別名、知恵の泉といわれるミーミルの泉に出かけます。

このミーミルの泉、どこにあるのかというと第2層の巨人族が住むヨトゥンヘイム。

いわば敵対関係にあるところですが、この時点では巨人族、まだ神々に対抗する力を持っていなかったのでしょう。

しかしミーミルの泉は巨人ミーミルが守っており、ミーミルは知恵の泉の番人をしているくらいなのでとても賢いのです。 続きを読む 北欧神話!オーディンが訪れたミーミルの泉

北欧神話の体系は詩の教則本から

北欧神話が現在に伝えられる源流となったのは1220年頃、アイスランドの詩人スノッリ・ストゥルルソンが記した詩の教本「エッダ」で、このなかの「ギュルヴィたぶらかし」が主に現在の北欧神話を形成しています。

ギリシャ神話同様、北欧神話も北ゲルマン系民族による詩の形で口語伝承されたもので、この神話の詩を散文にして解説、若い詩人たちへの指南書としたのですが、それまで口語伝承の詩が文面として残っていなかったことから北欧神話を初めて体系的にまとめたとして高く評価されています。

スノッリの書いた「エッダ」の元になっているのは古ノルド語(13~14世紀の北ゲルマン民族で使われた言語)で作られた北欧神話や英雄伝説の詩ですが、スノッリが「エッダ」を書いた50年後、それらの詩の原型を記した「王の写本」が発見されたことから、この「王の写本」を「古エッダ」や「韻文のエッダ」、スノッリが書いたエッダを「散文のエッダ」とか「スノッリのエッダ」として区別しています。 続きを読む 北欧神話の体系は詩の教則本から

北欧神話!巫女の予言

北欧神話はなぜ天地創造と同時に世界終末まで世界観として描かれていたのか、というと、この北欧神話の構成の元になった「散文のエッダ」では重要な一節として、その後に書かれた「古エッダ」では冒頭にある「巫女の予言(ヴォルヴァの予言)が、いきなり天地創造と最終的な世界滅亡を語ることがその理由です。

映画の世界でもよくありますよね。

結末を見届けた脇役が語り部となって全編を話し始める、という方式。

最近の映画ではクリストファー・ノーランが監督した「インセプション」で、サイトー(渡辺謙)の元にやってくるコブ(レオナルド・ディカプリオ)がファーストシーンに登場するという、あの手法です(あんまり紹介するとネタバレになってしまうので)。

一種の倒置法ともいえます。 続きを読む 北欧神話!巫女の予言

北欧神話の陰の主役ロキ登場

北欧神話は9つの世界による三層構造、神々と巨人族の対決という図式で成立しています。

最高神となったオーディン率いるアース神族とヴァン神族による小競り合いみたいな戦いもありますが、これは本筋による横糸、味付けみたいなもので大した意味はありません。

また最高神オーディンの冒険譚とかもありますが、複雑に絡んでいるにせよ、これも横糸でしょう。

北欧神話は誕生と同時に滅亡が描かれている、世界でも珍しい神話なのです。

その滅亡とは人間が住むミッドガルドの外に作られたヨトゥンヘイムに住む巨人族が神々を襲うというもの。 続きを読む 北欧神話の陰の主役ロキ登場