「言葉の摩訶不思議学」カテゴリーアーカイブ

音と形のシンボル化が文字をつくる!言葉の摩訶不思議学

「共感覚」という現象があります。これは、ある音を聞くと、それが刺激になってある形が見えたり、あるいは、あるモノを見るとある匂いを感じたりする、一種の感覚的異常のことを指した言葉でもありますが、もしかすると、古代の人々はそうした「共感覚」機能を現代人よりも洗練した形で備えていたのかもしれません。共感覚の症例によると、あるモノには常に同じ形や音や匂いが結びついているということです。

現代からすると、単なる異常にしか過ぎない、この感覚を古代の人々が「世界をより深く探るための一つの能力」としていたなら、きっと当時の言語の音や文字にも「共感覚」によって得られた情報が含まれていたはずです。 続きを読む 音と形のシンボル化が文字をつくる!言葉の摩訶不思議学

最初のアルファベットに付けられた名前の謎!言葉の摩訶不思議学

アルファベットという言葉は、ギリシャ語文字の一番目と二番目の名前が「アルファ」と「ベータ」であることから、そう呼ばれているのはご承知のとおり。 ヘブライ語の場合は、「アレフベート」といいます。つまり、Aにあたる文字は「アレフ」、Bにあたる文字は「ベート」と名付けられているのです。

「アルファ(α)」や「ベータ(β)」、あるいは「エイ(A)」「ビー(B)」などは、古い言語のアルファベットから借用したものなので、文字の名前以外には意味はありません。 続きを読む 最初のアルファベットに付けられた名前の謎!言葉の摩訶不思議学

アルファベットとは、大事なものの順番だった可能性!言葉の摩訶不思議学

再び、「A」という文字について考えてみます。

種々の西欧言語文字のもとになったフェニキア語アルファベットの「A」にあたる文字が、もともとは「牡牛の顔」を模したもの(牡牛を表す象形文字)だった、ということはわかりました(ちなみに、漢字の「牛」もやはり、「牡牛の顔」を模した象形文字なのです)。しかし、なぜ「牡牛」が「A」の名前に選ばれたのか、ということです。

アルファベットの最初の文字に与えられた名前が「牡牛」であるからには、この「牡牛」には、それなりの意味があったに違いないのです。それは、古代世界において広く見られた「聖牛信仰」と、なにか大きな関係があるのでしょうか?祖シナイ文字の「A」は、それこそ「牡牛の顔」そのものでした。 続きを読む アルファベットとは、大事なものの順番だった可能性!言葉の摩訶不思議学

言葉の不思議な『縁』を思う!言葉の摩訶不思議学

アルファベット文字に付けられた名前について、その歴史的な背景などを簡単に紹介してきました。そして、名付けの際の「疑問」についても、少し触れました。ところで、もっと根源的な疑問もあります。

「なぜ、昔の人は、牡牛をアリフ、らくだをガマルと呼んだのか?」しかも、この疑問は、それぞれの言語の数だけ問われなくてはなりません。日本では、「なぜ、牛は『ウシ』、馬は『ウマ』というのか?」となります。 続きを読む 言葉の不思議な『縁』を思う!言葉の摩訶不思議学

言語は、血をかよわせた生き物のよう!言葉の摩訶不思議学

ある一つの言語も、まずは大昔の祖先により、そのきっかけ(土台)を作られ、その後は数多くの子孫(私たちから見れば、数多くの祖先)により連綿と受け継がれてきつつ、進化発展を遂げた、「モノとオト、それに意味を関連付けた、思想の集大成」とも言えるのです。

ある単語はより発展し、強化され、その分布範囲も広がっていったでしょうし、反対にある単語はその勢力が弱まり、しだいに消滅していったり、あるいは別の単語の中に吸収されていったり、などということもあったでしょう。だから、「言語の発展」(文字の発展)にも、「生物の進化」と似たような道を歩むところがあるのです。 続きを読む 言語は、血をかよわせた生き物のよう!言葉の摩訶不思議学

移動や変化を意味する『R』の音!言葉の摩訶不思議学

いろいろな言語音の話しをしてきましたが、数ある言語の音の中でも、「ルルルッ」という「R」の音は、言語の歴史において特に重要視されていたようです。

古い言語(ラテン語や古典ギリシャ語など)では、この「R」音は、今よりも強調して発音されていたことが窺われますし、殊に祈りや呪いの言葉(呪文の言葉)の中では、そうした呪文の効果をほどよく発揮するための「振動音」として扱われていたことが推察されます。 続きを読む 移動や変化を意味する『R』の音!言葉の摩訶不思議学

字は体を現わす!言葉の摩訶不思議学

前に(「音声言語の神秘」編のところで)、漢字の「牛」は「牡牛の顔」を模した象形文字からできていると述べました。漢字の「羊」も、やはり「牡羊の顔」を現わしたものです。

それにしても、本当に牛や羊の顔に見えてくるから不思議です。実によくできています。その「羊」があまりにも美しかったから、「美」という漢字もできたのだそうです。

「漢字」は、文字どおりモノゴトの「感じ」をうまく表している、まさに「感字」です。「牡牛の顔」から作られたアルファベットの「A」(表音文字)も、そういう意味では、もともとは「象形文字」あるいは「表意文字」であったとも言えるでしょう。 続きを読む 字は体を現わす!言葉の摩訶不思議学

ハングルは偉大な文字!言葉の摩訶不思議学

漢字や象形文字は、モノの感じをうまくつかんでいる字という意味で、まさに「感字」といった感じです。漢字の成立ちもまた、東洋の神秘の一つでしょう。そして、もう一つの「感字」が東洋にはあります。ハングルです。

現在、大韓民国(韓国)と朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)で使われている、このハングルは、15世紀の中頃に、当時の李朝第4代の王である世宗の命令によって、学者たちに作らせた新しい合理的な文字です。

そして1446年に公布されたハングルは当初、「民に訓(おし)える正しい音」という意味で「訓民正音」とも呼ばれました。「グル」というのは「文字」のことです。 続きを読む ハングルは偉大な文字!言葉の摩訶不思議学

漢字以前の神字(かんじ)とは?言葉の摩訶不思議学

ハングルは、字の如く「ハングル」→「唯一の文字」ということで、朝鮮半島に固有のユニークな文字体系というように、前に説明いたしました。ところが、もしも唯一ではなかったとしたら? そのことについて話しましょう。

「ミウチニシオイチネムタテマツル」(身内に塩一年奉る?)

九州は宮崎の、ある神社の境内の置石には、そのように読める不思議な文字が刻まれていました。1985年8月22日、その日、私が境内で紙に書き写していた文字は、神代文字の一種だとされる「アヒル文字」(阿比留文字)だったのです。 続きを読む 漢字以前の神字(かんじ)とは?言葉の摩訶不思議学

五十音の故郷!言葉の摩訶不思議学

以前、ある人(日本人)から聞いた話なのですが、インドのある地方の小学校で、そこの先生(インド人)が生徒に母国語の文字を教え始めるさい、その先生は「ア・イ・ウ・エ・オ…」とか「ア・カ・サ・タ・ナ…」と、まるで日本の国語の時間を思わせるような、五十音の発声練習を始めたのを見たというのです。

それで、インドのその地方の「ある言語」と「日本語」との間では、お互いに音の構造がとても似ていて、そのことに大変驚いた、ということでした。五十音図の歴史は意外と古く、その作成は平安時代にまで遡ります。ちなみに、多くの人は、「アカサタナ」よりも、「イロハニホヘト」(いろは歌)のほうが古いと思っているようです。 続きを読む 五十音の故郷!言葉の摩訶不思議学