前項で登場した「燕石雑志(えんせきざっし)」の著者は曲亭馬琴(きょくていばきん)という作家で、刊行したのは和漢三才図会よりも100年遅い文化8年(1811)です。

曲亭馬琴と聞いても分からない人は多いでしょうが、「南総里見八犬伝」の作者と聞けば思い当たる人もいるはず。

室町時代後期を舞台にした長編伝奇小説で、安房国里見家の伏姫と神犬八房の因縁によって結ばれた八犬士の物語は現在で言うところのSF物語で、冒険的アニメの源流にもなっている活劇です。

曲亭馬琴は 燕石雑志を刊行後、48歳から75歳に至るまでの後半生を費やし、その全体は98巻106冊から成立している大長編です。

執筆中、最後は視力を失いましたが、それでも息子の嫁に口述筆記させたというエピソードを残しています。

もちろん南総里見八犬伝だけでなく、数多くの読本や随筆を残しており、江戸時代においては作家として原稿料だけで生計を営むことができた数少ない1人です。

読本には挿絵が描かれますが、当時、馬琴の挿絵をもっとも多く描いたのが葛飾北斎。

葛飾北斎は読本作者の意図に従わず自分の感性で挿絵を描くことで知られており、馬琴とも度々衝突しましたが、お互いの才能を認め合っており、北斎が有名になる前は馬琴の家に居候していたこともあるそうです。

当時の才能同士のぶつかり合い、かなり見応えがあったでしょうね。

こんな記事も読まれています: